左が2年前。
右が現在です。
同じお客様の髪です。
以前はラフェ・クレールへ通ってくださっていたお客様ですが、
仕事上のお付き合いもあり、
約2年間、別の美容室へ通われていました。
そして2年前、
久しぶりにご相談に来られました。
その時に言われた言葉を、
今でも覚えています。
「仕事の関係で美容室に行っていたけれど、
自分でも髪がかなりヤバいと思って、
相談に来ました」
ご本人にとっては、
それくらい髪の状態が気になっていたのだと思います。
まず、
2年前と現在を見比べてみてください。

見た目の印象は大きく変わりました。でも、最初に伝えておきたいことがあります
写真を見ると、
髪の印象はかなり違って見えると思います。
ただし私は、
この写真だけを見て、
「前の美容室で傷んだ」
「一つの薬剤だけが原因だった」
「カラサポだけで髪が元通りになった」
と断定するつもりはありません。
髪の状態には、
過去のカラー、
縮毛矯正、
ドライヤーやアイロン、
摩擦、
ホームケア、
髪そのものの履歴など、
多くの条件が関係します。
そして一度損傷した毛髪が、
生物学的に新品の髪へ戻るわけでもありません。
そのうえで、
実際にご来店時の髪を触り、
濡れた状態や毛先の動きを確認した時に、
私が特に気になったのが、
アルカリ処理を繰り返した髪に見られる
「軟化」と、
それに伴う扱いにくさでした。
私が美容師として使う「髪の軟化」という言葉
「軟化」と聞くと、
柔らかくなって良いことのように感じるかもしれません。
でも、
ここでいう軟化は少し違います。
私が現場で見ているのは、
濡れた時に必要以上に髪が柔らかく感じる。
髪の形が安定しにくい。
毛流れが揃いにくい。
パヤつきや広がりが出やすい。
乾かした時にも、
本来の髪より頼りなく感じる。
といった状態です。
これは病名ではありません。
美容師として、
髪を濡らした時の伸び方、
手触り、
弾力、
乾かした後の形などを見ながら、
私が施術判断のために使っている表現です。
そもそも、なぜアルカリカラーは髪を膨らませるのか
一般的な酸化カラーは、
黒い髪を明るくしながら色を入れるために、
アルカリと過酸化水素の働きを利用します。
これは悪いことではありません。
黒髪を明るくしたい時には、
必要な働きです。
アルカリ側へ傾くことで、
毛髪は水分を取り込みやすくなり、
膨らむ方向へ変化します。
その状態を利用して、
染料や酸化剤が毛髪内部へ働きます。
つまり、
アルカリによって髪が膨潤すること自体は、
酸化カラーの仕組みの一部です。
問題は、
「アルカリカラーが悪いかどうか」
ではありません。
今その髪に、
その作用が必要なのかどうかです。
リタッチカラーなら、毛先は絶対に傷まない?
髪が傷んできた時、
「今回は根元だけ染めましょう」
とリタッチカラーを提案する美容室は多いと思います。
これは合理的な考え方です。
毛先へ酸化カラーを直接塗らなければ、
毎回毛先までアルカリカラーを塗る方法と比べて、
毛先への酸化処理を減らせます。
私も、
リタッチという考え方そのものを否定していません。
ただ、
私はそこで終わりにはしません。
カラー剤を流す時には、
乳化やすすぎの工程で、
根元に使用した薬剤を含む水分が
中間から毛先を通る場面があります。
また、
髪は水に濡れれば膨潤し、
シャンプー、
コーミング、
タオルドライなどによる摩擦も受けます。
特に、
すでに大きくダメージしている毛先では、
こうした小さな負担も無視したくありません。
ただし、
「リタッチのすすぎ液が毛先を通っただけで、
必ず髪が傷む」
とまで言うことはできません。
接触時間、
薬剤の種類、
pH、
髪のダメージ履歴、
すすぎ方などで条件は変わるからです。
だからラフェ・クレールでは、
「根元だけ染めたから毛先は関係ない」
と考えるのではなく、
すすぎ、
摩擦、
毛先のコンディショニングまで含めて
一つのカラー施術として考えています。
毛先の色を変えたい時は、さらに考えることが増えます
もう一つあります。
根元だけではなく、
毛先の色も変えたい時です。
たとえば、
明るくなってきた毛先を少し暗くしたい。
色が抜けてきたので、
もう一度きれいな色を入れたい。
季節に合わせて色味を変えたい。
こうした希望は当然あります。
一般的な美容室でも、
毛先への負担を考えて、
過酸化水素濃度を下げたり、
アルカリ量を減らした薬剤を使ったり、
アルカリの働きを抑える処方を組み合わせたりします。
それぞれに意味があります。
ただ、
私が最初に考えるのは、
「その毛先に、
もう一度明るくする作用が本当に必要なのか」
ということです。
すでに十分明るくなっている毛先を、
今回は暗くしたいのであれば、
さらにメラニンを減らすための作用は
必要ない場合があります。
だからラフェ・クレールでは、
根元には根元の仕事。
毛先には毛先の仕事。
と分けて考えます。
「アルカリ剤が入っていたら全部同じ」ではありません
ここも誤解してほしくないところです。
アルカリカラーといっても、
すべてが同じ強さではありません。
使用するアルカリ剤、
完成した薬剤のpH、
アルカリを保持する力、
放置時間、
過酸化水素濃度、
もともとの髪のダメージなどによって、
毛髪への影響は変わります。
ですから、
「アルカリカラーは全部ダメ」
「弱い薬なら絶対に傷まない」
という二択ではありません。
私が大切だと思っているのは、
必要な場所には必要な力を使い、
必要のない場所には、
できるだけ余計な力を使わないこと。
これです。
このお客様に行ったのは、「傷んだ髪を元に戻す」ことではありません
2年前、
このお客様の髪を見た時に、
私が考えたのは、
「何を付ければ、
今日きれいに見えるか」
だけではありませんでした。
一度損傷した毛髪を、
生まれたばかりの髪へ戻すことはできません。
だからまず、
これ以上、
必要のない負担を増やさないこと。
そこから考えました。
根元と毛先を同じ髪として扱わない。
必要な明るさを作るところと、
すでに明るさがあるところを分ける。
毛先には、
今ある明るさを利用して
色とコンディションを整える。
そして、
髪質改善も一回で判断するのではなく、
次回来店した時、
その次、
半年後、
さらにその先まで見ていく。
そうして現在まで、
髪の状態を確認しながら施術を続けています。
2年前と現在。私が一番見てほしいところ
私がこの写真で見てほしいのは、
単純な「艶」だけではありません。
髪全体の輪郭。
毛流れ。
表面のパヤつき。
毛先までのまとまり。
そして、
ロングヘアとして見た時の
全体の印象です。
髪が整うだけで、
人の見た目の印象は大きく変わります。
ただ、
「何歳若く見える」といった数字で
評価するつもりはありません。
大切なのは、
2年前にご本人が
「自分でもヤバいと思った」
と感じていた髪が、
現在は、
長さを保ちながら
ここまで違う印象になっていることです。
他の美容室やアルカリカラーを否定したいわけではありません
今回の記事を書いた理由は、
他の美容室の施術を否定するためではありません。
アルカリカラーには、
黒髪を明るくし、
白髪を染め、
多彩なヘアカラーを作れる
大切な役割があります。
私自身も、
必要な場所にはアルカリカラーを使います。
ただ、
「使えるから使う」のではなく、
「今この部分に必要だから使う」。
その判断を大切にしています。
このお客様の2年間を見て、
私自身も改めて感じました。
髪質改善は、
最後に何か良いトリートメントを付けるだけではなく、
毎回行うカラーそのものを
どう設計するかまで含めて考える必要がある。
ということです。
トリートメントは意味がないの?
いいえ。
トリートメントは大切です。
毛髪表面の摩擦を減らす。
指通りを整える。
毛羽立ちを抑える。
水分や油分の状態を整える。
こうした役割があります。
特に、
すでにダメージが大きい髪では、
カラー後のコンディショニングまで考えることは重要です。
ただし、
「毎回同じ負担を加えて、
最後にトリートメントで元に戻す」
という考え方だけではなく、
まず必要以上の負担を増やさない。
そのうえで必要なケアを行う。
私はこの順番を大切にしています。
カラサポで大切にしているのも、この考え方です
ラフェ・クレールの
髪質改善カラー「カラサポ」も、
根元から毛先まで
同じ方法で染めるシステムではありません。
新しく伸びた根元。
すでに何度もカラーを経験している中間。
長い年月の施術履歴が残っている毛先。
同じ頭の髪でも、
状態は違います。
だから、
必要なところには必要なカラーを。
すでに明るさがあるところには、
必要以上の酸化処理を重ねない。
という考え方で施術しています。
カラサポの基本的な考え方については、
こちらで詳しく説明しています。
関連する実例と解説
白髪染めやカラーを繰り返した毛先で、
なぜパサつきやチリつきが起こりやすくなるのかについては、
こちらの記事で詳しく説明しています。
また、
カラーをする時間そのものを利用して、
毛先のコンディションを整えるカラサポの考え方については、
こちらで解説しています。
一回の仕上がりではなく、
数年間の髪の変化を追った別の実例はこちらです。
よくあるご質問
リタッチカラーなら毛先は絶対に傷みませんか?
毛先へ酸化カラーを直接塗らない分、
毎回全体へ塗る方法より毛先への酸化処理を減らせます。
ただし髪はすすぎ、シャンプー、摩擦、熱などの影響も受けるため、
「毛先への負担が完全にゼロ」とまでは言えません。
トリートメントをすればアルカリによるダメージは元に戻りますか?
トリートメントには摩擦や指通り、まとまり、表面状態などを整える役割があります。
ただし、一度失われた毛髪内部の構造が生物学的に元通りになるわけではありません。
そのため当店では「補修すること」と同時に、
新しい負担を必要以上に増やさないことを重視しています。
毛先の色を変えたい場合はどうしますか?
現在の明るさ、残っている色、ダメージ履歴、希望する色を確認して方法を決めます。
すでに十分な明るさがある毛先では、
さらに明るくする必要がなければ、
今ある明るさを利用して色味を整える方法を考えます。
今回の実例から、私が改めて感じたこと
髪は、
一回の施術だけを見ても分からないことがあります。
今日きれいだったか。
それだけではなく、
2か月後はどうだったのか。
半年後はどうだったのか。
2年後、
毛先はどうなっているのか。
私が美容師として本当に見たいのは、
そこです。
このお客様が、
髪の状態を心配しながら
勇気を持って相談に来てくださったからこそ、
その後の髪を長く見続けることができました。
そして、
こうした一人ひとりの経過を残していくことが、
次のお客様の髪を考える時の
大切な材料になります。
髪をきれいにするために、
最後に何を付けるかだけではなく、
毎回のカラーで
「何をしないか」まで考える。
これも、
ラフェ・クレールが考える
髪質改善の大切な部分です。
参考にした毛髪研究
この記事では、
ラフェ・クレールで実際にお客様の髪を見てきた経験と、
一般的な毛髪研究で確認されていることを分けて記載しています。
・Malinauskyte E, et al.
“Effect of equilibrium pH on the structure and properties of bleach-damaged human hair fibers.”
Biopolymers. 2020.
DOI: 10.1002/bip.23401
・Dias MFRG, et al.
“The Shampoo pH can Affect the Hair: Myth or Reality?”
International Journal of Trichology. 2014.
・“Investigation of hair dye deposition, hair color loss, and hair damage during multiple oxidative dyeing and shampooing cycles.”
2016.
・“Comparison of damage to human hair fibers caused by monoethanolamine- and ammonia-based hair colorants.”
2014.
なお、
これらの研究が今回のお客様の髪の原因を直接証明しているわけではありません。
一般的な毛髪の性質を理解するための参考資料として使用しています。
この記事を書いた美容師
La Fee Claire(ラフェ・クレール)代表。
20歳から美容師として、
カラー、
くせ毛、
縮毛矯正、
年齢による髪質変化と向き合ってきました。
一回の施術直後だけではなく、
次回来店時、
半年後、
数年後の髪まで見ながら、
施術方法を検証することを大切にしています。
中津市で、カラーによる髪のダメージにお悩みの方へ
「ずっとリタッチなのに、
なぜか毛先が扱いにくくなってきた」
「トリートメントをしているのに、
パサつきや広がりが気になる」
「カラーは続けたいけれど、
このままでいいのか不安」
そんな時は、
今の髪だけではなく、
これまでどんなカラーや施術をしてきたのかも
聞かせてください。
髪の履歴を確認したうえで、
今できること、
できないことをお伝えします。
ご予約は、
お電話で承っております。